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(日記)タカハシ

2009年08月08日 00:51

地元に「タカハシ」というもんじゃ焼き屋があった。

もんじゃ焼き屋というほど形式だった立派な物ではなく、家の玄関の土間を利用した二席しかない店だ。
ここはバアチャンが一人でまわしてる店で、儲けとかではなく趣味の一環でやっていたのではないかと思う。

確かもんじゃ焼きを250円で提供していた。



当時500円くらいの小遣いだった僕にはかなり敷居の高いおやつであるけど、看板も何もない隠れ家的な店でもんじゃ焼きを食べるというのが、子供ながらにして通な感じがとても嬉しく、「まだオマエラ蒲焼き太郎食べてんの?もんじゃ知らねぇの?」なんて優越感に浸っていたものだ。

この「タカハシ」には二種類のもんじゃ焼きがあり、定番のカレー味とオドロキのシチュー味があった。
シチュー味て‥‥と思うだろうが安心してほしい。
シチュー味を頼んでも結局カレー味と同じ茶色い粉、つまりカレー粉のかかった、カレー味と全く同じもんじゃ焼きが出てくる。

味は一種類しかないけど、選択する楽しさを提供するタカハシの遊び心。



そんなタカハシを僕は通い続けていたのだけども、ある日妙な噂を耳にすることになる。




「タカハシのバアチャンは客が食べたソースを再利用するんだぜ」

ふざけるなよ!!!!!!!!!!!

タカハシのバアチャンがそんなことするわけがないだろう!!

すっかり常連になった僕にとって許し難い風説の流布。


そもそもタカハシのもんじゃ焼きは、もんじゃ焼きの素の中にソースを入れて混ぜ込み焼くスタイル。

戻しようがない。



ただソースは刺身の醤油皿に入れられて提供される為、薄味派が半分しか混ぜなければ当然余る。

百歩譲って戻したとしても、手付かずのソースだ。過酷な時代を生き抜いてきたバアチャンだ。勿体無いという気持ちもあるだろう。


許す!


僕は以上の正当性を顔を真っ赤にしながら、この名誉毀損野郎にブチ撒けた。


「ソースにつける派知らねぇの?」

つける派・・・と・・・な?


そんなトリッキーなスタイルなど想定していない。
焼いたもんじゃ焼きを焼き肉のタレのようにソースにつけて食べる。

なんという邪道な派閥!!



「M君!放課後タカハシ行くぞ」



僕はタカハシの名誉とつけるスタイルへの挑戦のため、常連のM君とタカハシに向かった。





いつもなら引き戸をあけたらすぐにバアチャンが迎えてくれるのだが、この日はいつもと違い僕らを迎えたのは静寂のみ。


留守?
珍しいなと思ったとき



「ちょっと待っててー」



という声が家の奥から。

しばらくすると、濡れた髪をタオルでワシワシと拭きながら現れたバアチャン、全裸。



ソースを戻す噂など、どうでも良い衝撃度。



生粋の童貞(小4)だった僕にはアダルトすぎる歓迎スタイル。


「ごめんごめん。お風呂入ってて。で?カレー味?シチュー味?」


裸で現れた事ではなく、風呂に入ってて遅れたことへのゴメン。

そして矢継ぎ早の「で?」。



ハイレベルな展開に終始圧倒され続けた僕らは「カ、カレーください!」と早口でオーダー。





そして僕らはもんじゃをソースにつけるスタイルで食すことに。



「これはこれで。」

「うむ。ソースのコクが」



僕とM君はつける派も認めてあげようという意見を合致させたあと、店を出ることに。




ここからが勝負である。
僕とM君はすぐさま店の外に隠れ、片付けを見守ることに。

するとバアチャンは僕らの食器をテキパキと片付け始める。

途中、冷蔵庫を開けて取り出したソースの瓶には





































images.jpg

まさかの漏斗
















あれからもう20年近くたつのだろうか。

現在は区画整理が進んで、タカハシのあった場所は綺麗な道路になっている。
引っ越したのか、建て替えたのか。
ひょっとしたらあのバアチャンはもうこの世にいないのかもしれない。


上京して月島のもんじゃ焼き屋に行った。

様々な種類のもんじゃ焼きがあり、どれも具沢山で値段も立派だ。

タカハシのバアチャンは子供に美味しい物を安く食べさせたいという思いでやっていたのだから、この月島の商魂逞しいもんじゃ焼きを見たら怒るかもしれない。



本場のもんじゃ焼きを前にタカハシを思い出しながら、具沢山の豪華なもんじゃ焼きを食べる。

驚くことにキャベツと玉子のみのタカハシの方が遥かに美味しかった。



あの件以来自然と足が遠のいてしまったタカハシ・・・


僕らに美味しいもんじゃ焼きを安く提供してくれたバアチャン・・・



その日俺は星一つ見えない月島の夜空の下、さめざめと泣いた。

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コメント

  1. ポン太 | URL | -

    >バアチャン、全裸。

    ギャアアアア!!
    おばあちゃんって裸にまったく抵抗ないですよね。

    ソースの使いまわしとか今だとかなり問題になりそうですが
    昔はそんなこと気にしなかったんでしょうね。

    僕も小学生の頃、古い駄菓子屋でポテチ買ったら賞味期限かなり切れてて、それをおっちゃんに言ったら一口食って「食える食える」ってな感じでした。

    月島、この前テレビで写ってたんですがまだ昔の雰囲気を残してるみたいですね、昔ながらの駄菓子屋に子供が集まってるみたいな。
    …と思って今Googlemap見たらそうでもないみたいですね…。

    まだ一度も行ったことないんですが僕の本籍を見ると勝どきと書いてあって結構近いのでその辺も一度くらい行ってみたいです。

  2. フェロモン | URL | -

    過酷な時代を生きてきました。
    感謝と尊敬でいっぱいです。

    ソースは創業○○年の継ぎ足しのモツ煮よろしく、深い味わいと濃厚なコク・・・
    さすが継ぎ足しです。

    生まれが勝どきなんて、月島・築地の粋な土地で最高ですね。
    田舎者の僕が言うのも変ですが、行っとけ、あそこら辺

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